行政書士試験の傾向と合格率の分析

 行政書士試験の傾向を分析するに当たって、ポイントとなるのが、2000年と2006年の試験改正です。これらの改正で、難化傾向が制度的にも明確になりました。ただ、その一方で、2006年以降も、合格率は下がっていません。その大きな原因が新司法試験開始後の司法試験受験生の流入と考えられます。以下で詳述します。

◆行政書士試験の難易度の傾向

 行政書士試験は、1990年代から少しずつ難化し始めました。その難化傾向を制度的にも明確にしたのが、2000年(平成12年)と、2006年(平成18年)の試験改正です。これらの試験改正について意識しておくことは、受験生にとって必須といえるでしょう。

1.2000年度(平成12年度)行政書士試験改正について

 2000年度行政書士試験から、試験委員が学者になり、出題形式も変わりました。1999年度までは、択一式と時事問題などの論述式問題からなっていたのに対し、2000年度からは、択一式と法令の記述式となりました。
 そして、択一式問題も、これを境に大きく変化しました。それまでは、比較的易しい問題が繰り返し出題される傾向が強かったのですが、2000年度以降は、よりレベルアップした問題が出題されるようになりました。
 この改正により、過去問の繰り返しだけでは合格が難しくなりました。基礎からしっかり理解をして、応用力も身につける対策をとる必要が高まりました。

2.2006年度(平成18年度)行政書士試験改正について

 現在の試験の形式を定め、より「理解力、思考力」を重視することを明確にしたのが、2006年度の試験改正です。
 このときに総務省が発表した『(試験)改正の考え方』においては、特に法令科目について、「理解力、思考力等の法律的素養」を重視することが打ち出されました。それに伴い、試験科目が変更され、記述式が40字程度になり、多肢選択式が採用されるなど、形式面が大きく変わりました。
 この試験改正前後から、学説問題が散見されるようになるなど、内容的にも難易度のレベルが高まりました。その後は、「ある程度高いレベルで高止まりしている状況」と言えるでしょう(それにも関わらず、合格率が比較的高まっている原因については後述します)。
 以上の2度の試験改正を経て、行政書士が「比較的容易にとれる資格」と言われた時代は終わりました。的確な対策をとって、行政書士試験合格を目指しましょう。


◆行政書士試験の合格率の分析

 まず、合格率の推移を次の表で確認してください。2度の試験改正の前後で合格率が低くなっていますが、2006年度試験改正後は、(補正措置のあった2014年度を除いて)それほど合格率が低くならずに推移しています。

1.各年度行政書士試験における結果・合格率の推移

合格者数 合格率 出来事
1994年度(H6) 1,806 4.5%
1995年度(H7) 3,681 9.3%
1996年度(H8) 2,240 6.1%
1997年度(H9) 2,902 8.6%
1998年度(H10) 1,956 5.9%
1999年度(H11) 1,489 4.3%
2000年度(H12) 3,558 8.0% 行政書士試験改正
2001年度(H13) 6,691 11.0%
2002年度(H14) 12,894 19.2%
2003年度(H15) 2,345 2.9%
2004年度(H16) 4,196 5.3%
2005年度(H17) 1,961 2.6%
2006年度(H18) 3,385 4.8% 行政書士試験改正
新司法試験はじまる
2007年度(H19) 5,631 8.6%
2008年度(H20) 4,133 6.5%
2009年度(H21) 6,095 9.1%
2010年度(H22) 4,662 6.6%
2011年度(H23) 5,337 8.1%
2012年度(H24) 5,508 9.2%
2013年度(H25) 5,597 10.1%
2014年度(H26) 4,043 8.3% 補正措置
(合格点14点引下げ)
2015年度(H27) 5,820 13.1%
2016年度(H28) 4,084 10.0%
2017年度(H29) 6,360 15.7%
2018年度(H30) 4,968 12.7%

2.2006年試験改正後の合格率の分析

 上述したとおり、行政書士試験の客観的な難易度は、2度の試験改正を経て、ある程度のところで高止まりしています。にもかかわらず、2006年度の試験改正の後、補正措置のあった2014年度を除いて、合格率はむしろ少しずつ上がっているようにも見えます。この大きな原因と考えられるのが、司法試験受験生の流入です。
 上の表にも書いてありますように、2006年から新司法試験が始まりました。このときに行政法が必修科目となり、行政書士試験と試験科目が重なるようになりました。そのため、司法試験の予備校では、「腕試し」として行政書士試験の受験が盛んに勧められるようになりました。また、受験回数制限も導入されたため、新司法試験に合格できなかった方々にとっては、行政書士試験がある種の受け皿になっていると考えられます。
 2012年5月17日の日本経済新聞WEB版は、日本行政書士会連合会の田後隆二専務理事の次のようなコメントを掲載しています。「司法試験に落ちた人が入ってきている。06年度から始まった新試験では法科大学院を出た後、5年、3回以内に合格しないと弁護士になれない。国は当初、年間3千人を合格させる計画だったが約2千人に絞った。不合格者が法律家の夢をあきらめきれず、行政書士などに流れている」。実際、私たちスタッフが所属している都道府県の行政書士会でも、新規登録者の多くを、元司法試験受験生が占めるようになっています。
 正確な数字はわかりませんが、相当数の司法試験受験生が行政書士試験を受験し、合格率を押し上げていると考えられます。そのため、司法試験受験生を除いた受験生の合格率は、表面に現れている数字よりもかなり低いとみられます。司法試験コースも併設している某大手予備校では、行政書士試験のコースから合格者を出せなかったために、合格体験記を、司法試験コースの受講生に書いてもらったという笑えない話も聞こえてきています。  

◆行政書士試験に合格するために、すべきこと

 以上の分析から、行政書士試験に合格するためにどうすればよいのかが見えてくると思います。まずは、試験改正の目的に合致した「理解力、思考力等の法律的素養」を重視した学習をすることです。当塾が開塾以来一貫して実践してきた理解重視の学習は、まさにこうした試験機関の意図に合致したものです。
 そして、司法試験受験生の合格率が高いことにも着目する必要があります。彼らは、数年間にわたり、大変な時間と労力を使って、法律の基礎理論から細かいことに至るまで勉強しています。ですから、彼らから見れば、行政書士試験に合格することはそれほど難しいことではありません。
 では、行政書士試験に合格するために、司法試験受験生と全く同じ学習をすれば良いのでしょうか?
 それは違います。司法試験と行政書士試験では難易度に大きな違いがありますので、司法試験と全く同じ学習をしたのでは、「深入りしすぎ」となり、行政書士試験の合格まで何年もかかってしまいかねません。しかし、方向性としては、司法試験の学習と同様に、基礎理論からしっかり理解していくことが重要です。つまり、司法試験と同様のメソッドで途中まで学んで、その土台の上に、行政書士試験レベルの知識を積み上げていくことが、最も効率的で確実に行政書士試験に合格する方法だと考えます。
 突破塾の講座は、こうした考え方に基づき、行政書士試験合格に必要な範囲で、司法試験学習のメソッドを取り入れることで、高い合格率を実現してきました。よろしければ、ぜひ参考になさってみてください。